今回のテーマは「幾何学と代数系」の第8章から、「共形空間と共形幾何学−幾何学的代数:後編」です。8.6.3節〜8章の終わりまでを扱います。今回で教科書は最後です。反転子・拡大子の証明で議論が広がりました。
勉強会の内容
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- タイポの修正
- p.192 (8.117) \(\mathcal De_\infty\mathcal D^\dagger =\mathcal D^2e_\infty = (\exp\frac{\gamma}{2}\mathcal O)^2e_0\) の最後の\(e_0\)は\(e_\infty\)
- p.192 (8.119) \((\mathcal V x \mathcal V^\dagger)(\mathcal V y \mathcal V^\dagger) =\mathcal V x (\mathcal V^\dagger \mathcal V) y \mathcal V^{-1}\)の最後の\(\mathcal V^{-1}\)は\(\mathcal V^\dagger\)
- p.242 8.2(2) \(\mathbb R^{4,1}\)の元 \(x=(x_4+x_5)e_0+x_1e_1+x_2e_2+x_3e_3+\frac{1}{2}(x_5-x_4)e_0\) の最後の\(e_0\)は\(e_\infty\)
- 議論1 p.188 (8.99)の\(\sigma_0 p \sigma_0^\dagger = \frac{\|\mathbf x\|^2}{r^2}\left(e_0+r^2 \mathbf x^{-1}+\frac{1}{2}\|r^2\mathbf x \|^2 e_\infty\right)\)の箇所で「すなわち、球の中心から距離\(\|x\|\)の点が、同じ方向の距離\(r^2/\|x\|\)の点に反転されることが示された。」の記述がなぜかが理解できない。
- 方向は同じか?→\(\mathbf x^{-1}=\mathbf x / \|\mathbf x\|^2\)と置いているため\(\mathbf x\)と\(\mathbf x^{-1}\)の方向は同じであるため成立する。
- 「\(e_0\)を中心」とする反転を扱っていたはずだが「球の中心」に話が変わっている?→(8.95)のように並進子を使って解決する。
- 「演習問題8.5」はなぜ参照されている?→\(e_\infty\)を球面の双対表現\(\sigma\)で反転して、球面の中心\(c\)に写ることを確認したかった。
- 議論2 球面の半径を無限大にすると鏡映になるはず?
- 単純に半径だけを無限大にすると鏡映する平面が遠くに行ってしまうので、球の中心もそれにあわせて移動させる必要あり。
- (勉強会後) 原点を通る平面を導出したあと並進子で平面を移動させることで導出ができた。
- まず、原点\(e_0\)から距離aにある半径aの球面(つまり原点\(e_0\)を通る)を考える。
\[
c=e_0+a\mathbf{n}+\frac{a^2}{2}e_\infty \\
\sigma = c-\frac{a^2}{2}e_\infty =e_0+a\mathbf{n}\\
\] - 両辺をaで割り極限を取ると、下記のように原点を通る平面を表す式を導出できる。
\[
\lim_{a \to \infty} \frac{\sigma}{a} =\lim_{a \to \infty} \frac{e_0}{a} + \mathbf{n} = \mathbf{n}
\] - こののち、並進子\(\mathcal{T}_\mathbf{t}\)を適用することで、半径を無限大にした球面が鏡映の式と一致することを確かめられる。
\[
\mathcal{T}_\mathbf{t} \mathbf{n} \mathcal{T}_\mathbf{t}^{-1} = \mathbf{n} + \langle \mathbf{n}, \mathbf{t} \rangle e_\infty = \mathbf{n} + h e_\infty
\]
- 議論3 共形空間なので定数倍しても大丈夫だが、和や差をとる場合には気をつける必要があった。今回の計算で和や差をとったあとで定数倍している点が確認できた。
- 議論4 p.190 (8.103)の展開が少し技巧的。
- Dosrt p.469 に記載あり。こちらのほうがシンプル。
- \((e_0-\frac{1}{2}r_2^2 e_\infty)(e_0-\frac{1}{2}r_1^2 e_\infty)=(r_1^2+r_2^2)-\frac{1}{2}(r_1^2-r_2^2) e_0 \wedge e_\infty\)
- 議論4 p.193 命題8.1, 8.2の証明は式(8.55)に注意する必要がある。
- 議論5 p.193 表8.2 に書いているベクトル作用子は全てではなく、Dorst p.475では他にもtransversionが定義されている。ただしこれは反転と並進の組合せで表される。
- \(1+e_0\mathbf t = \exp (e_0 \wedge \mathbf t)\)
- タイポの修正
動画
次回
次回からは幾何学的代数の応用について見ていきます。「Tutorial: Geometric Computing in Computer Graphics using Conformal Geometric Algebra, Dietmar Hildenbrand」を題材にします。