幾何学的代数勉強会#6 実施報告(8章 共形空間と共形幾何学−幾何学的代数:前編)

この投稿は連載:「幾何学的代数勉強会」(全10回)の第6回です。


今回のテーマは「幾何学と代数系」の第8章から、「共形空間と共形幾何学−幾何学的代数:前編」です。ついに幾何学的代数の本題です。\(e_\infty\)を導入した空間での点・平面・球面・点対・平坦点などが出てきて双対表現まで入ります。勉強会ではタイポの修正から始めて、「点を\(\alpha\)倍すると加減算に影響が出るか」、「球の方程式のDorst本での別解」について議論しました。

勉強会の内容

  • GAViewerの使い方
    • 今回は使用していません。ただ、後述のDorstによる球の方程式の導出の別解を確認するために後日使ってみたいと思います。
  • タイポの修正(使用しているのは第1版2刷)
    • p.162 式(8.2)で\(\langle e_\infty, e_i \rangle\)が抜けている。
    • p.167 式(8.19) の\(\frac{r^2}{2}\)の符号が違う。正しくは\(p\cdot \sigma = -\frac{1}{2}\|\mathbf{x}-\mathbf{c}\|^2+\frac{r^2}{2}\)。
    • p.168 冒頭で反対称性の式右辺の添字が誤っている。正しくは\(e_i\wedge e_j = -e_j\wedge e_i\)。
    • p.174 式(8.47)の最後の式の第1項の符号はプラスではなくマイナス。
      \(p\cdot l = – (\langle \mathbf{n}_2,\mathbf{x}\rangle-h_2 )\mathbf{n}_1 + (\langle\mathbf{n}_1,\mathbf{x}\rangle-h_1 ) \mathbf{n}_2 + \langle h_2\mathbf{n}_1-h_1\mathbf{n}_2,\mathbf{x}\rangle e_\infty\)
    • p.175 8.4.3節冒頭の文中の式で添字が誤っている。\(\sigma_1\)となっているが正しくは\(\sigma_i\)。
    • p.175 式(8.49)で3箇所誤りあり。\(\sigma\)の添字が誤っているのと\(\langle p, \sigma_i \rangle\)を展開した項で符号が2箇所で誤っている。正しくは以下の通り。
      \[ \begin{align}
      p\cdot s &= p\cdot \sigma_1\wedge \sigma_2 \\
      &= \left( -\frac{1}{2}\|\mathbf{x}-\mathbf{c}_1\|^2+\frac{r_1^2}{2}\right) \left(c_2-\frac{r_2^2}{2}e_\infty\right)\\
      &\quad – \left( -\frac{1}{2}\|\mathbf{x}-\mathbf{c}_2\|^2+\frac{r_2^2}{2}\right) \left(c_1-\frac{r_1^2}{2}e_\infty\right)
      \end{align} \]
  • 議論1 p.167で\(\pi=p_1-p_2\)が2点の垂直二等分平面になっているとされている。同次空間であれば定数倍しても同じ点を表現するはずなので、ここで点\(p_2\)を\(\alpha\)倍して\(\pi=p_1-\alpha p_2\)と置いて計算しなおしたところ、\(\|\mathbf{x}-\mathbf{x}_1^2\| =\alpha\|\mathbf{x}-\mathbf{x}_2^2\|\)のように\(\alpha\)が残り結果が異なった。これはどう考えればよいか。
    • \(p_1, p_2\)における\(e_0\)の係数が1だと考えると\(\pi=p_1-\alpha p_2, (\alpha \ne 1)\)の計算結果は\(e_0\)の項が残るため、球面を表す式になるはず。
    • \(\alpha p_2\)は\(p_2\)と同じ点を表す。\(\pi\)として考えるときは全体を\(\alpha\)倍した \(\alpha\pi = \alpha p_1 – \alpha p_2\)が同じ平面を表す。
    • 和や差を取る場合は同次座標系だからといって定数倍を無視してもいいわけではない。点における\(e_0\)の係数は1であることが前提だと受け取られる。外積\(\wedge\)の場合は定数項が手前に来るだけなので影響がない。
    • 本来、内積はこの定数倍を考慮した定義が必要なのかもしれない。
  • 議論1の発展。p.166 式(8.14)の下の文、「このドット\(\cdot\)は第5章で導入した縮約であるが、共形空間の元どうしの縮約は内積を意味する。」は定義なのか計算の結果こうなるのかがわからない。
    • 内積がマイナスになりえるので直交の考え方も変わるのでは。
    • いったんこういうものとして受け入れて読み進めている。
  • 議論2 p.170 式(8.32)の下の文、「\((\cdots)\)は\(\mathbf{x}\)と\(\|\mathbf{x}\|^2\)の1次式であり、これを0とおくと球面の方程式が得られる。」とあるが、明らかではないように見えて納得感がない。
    • 「\((\cdots)\)は\(\mathbf{x}\)と\(\|\mathbf{x}\|^2\)の1次式であり」までは納得。\(a+\mathbf{bx}+ \mathbf{c}\|\mathbf{x}\|^2\) のような形になる。
    • これを平方完成すれば球の方程式になりそう。とはいえ、あまり直感的ではない。
  • 議論2の発展。Dorst本から別の導出。
    •  下式で導出している。\(\Pi_i\)は球面上の2点の垂直二等分線なので、球の中心を通る平面になっている。3平面の交差(meet, \(\cap\))をとると球の中心点を表すことを利用している。
      \[\begin{align}
      \Sigma &= p_1\wedge(p_2-p_1)\wedge(p_3-p_1)\wedge(p_4-p_1) \\
      \Sigma^* &= p_1 \cdot ( (p_2-p_1)\wedge(p_3-p_1)\wedge(p_4-p_1) )^* \\
      &= p_1 \cdot ( \Pi_2 \cap \Pi_3 \cap \Pi_4) \\
      &= p_1 \cdot \alpha (c \wedge e_\infty) \\
      &= \alpha ((p_1\cdot c)e_\infty – (p_1\cdot e_\infty)c) \\
      &= \alpha \left(c-\frac{1}{2}r^2 e_\infty \right),\quad r=\|p_1-c\|
      \end{align}\]
    • 直接表現と双対表現を行き来することで綺麗に導出できる面白い例に触れることができた。
    • これらの式を使うことで、4点を通る球やその中心、中心点と表面の1点を指定された場合の球が容易に計算できることになる。
    • これらについてGAViewerで確認できると面白そう。

動画

GAViewerでの確認

今回は省略します。

勉強会での取り組み

  • 画面共有で画面の固定をによりYouTube動画が見やすくなりました。
  • 勉強会後にホワイトボードサービスの代替としてWhiteboardFoxを試してみましたが、書いた数式を「範囲選択して移動させる機能」がないため採用を断念しました。この機能は勉強会中でも頻繁に使用しているので必須機能です。
    • 今後もSketchBoardのお世話になることになります。レスポンス低下さえなければ最高のなのですが。

次回

次回のテーマは幾何学と代数系 第8章「共形空間と共形幾何学−幾何学的代数−(中編 )」です。

シリーズ:幾何学的代数勉強会<< 幾何学的代数勉強会#5 実施報告(7章 同次空間とグラスマン−ケイリー代数:後編)幾何学的代数勉強会#7 実施報告(8章 共形空間と共形幾何学−幾何学的代数:中編) >>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

19 + sixteen =

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください