幾何学的代数勉強会#5 実施報告(7章 同次空間とグラスマン−ケイリー代数:後編)

この投稿は連載:「幾何学的代数勉強会」(全10回)の第5回です。


今回のテーマは「幾何学と代数系」の第7章から、「同次空間とグラスマン−ケイリー代数:後編」です。GAViewerでのbatchとfunctionの使い分けの話から始まり、たくさんあるタイポを修正しながら便利な双対定理にたどり着きます。

勉強会の内容

  • GAViewerの使い方
    • batchの使い方:特殊な関数のようなものでfucntionと違い名前空間がグローバルになる。C言語でいうとマクロに相当する。副作用がある(というか副作用しかない)。決まり事の初期設定がある場合などに便利。
    • functionでdual3関数を定義すると便利。7章では3次元の双対と4次元の双対が入り交ざって出てくるが、ビルトインのdualだと4次元の双対になる。毎回書くのが面倒なのと、定義して使うことで双対であることが明示されるメリットがある。
  • タイポの修正(使用しているのは第1版2刷)
    • p.146 式(7.53)の式展開で \(-e_0\cdot e_0 \wedge n = -n\) を使用するが、左辺と右辺が同時に出てくる途中式がある。どちらかが不要。
    • 同式(7.53)について、式の下に説明があるように式展開に \(-x\cdot(m\cdot I)= -x\wedge m\cdot I= (x\wedge m)^*\) を使用する。途中式に含まれる \((x\cdot m)^*\) は \((x\wedge m)^*\) であるべき。
    • p.147 式(7.58) 途中式で\(x\wedge q\)が出てくるが、正しくは\(x\wedge y\)。
    • p.147 式(7.60)の後半で\(e_2\wedge e_3\)が何度も出てくるが、正しくは \(-e_0\wedge (y_1e_2\wedge e_3 +y_2e_3\wedge e_1 +y_3e_1\wedge e_2 )\)。
    • p.148 式(7.62) 全体的に符号が誤っている。正しくは\(-e_0\wedge (x\wedge y)^* + (-x+y)^*\)。符号が入れ替わるだけでこのあとの議論には影響がない。
    • p.151 命題7.4の中頃の文中。\(\Pi\)の双対点は\(P^*\)ではなく\(\Pi^*\)。
    • p.151 式(7.71) に2箇所で符号間違いあり。式展開中頃の式で\(+m^*\wedge n_\Pi\) の項の符号はプラスではなくマイナス。次式\(-hm^*\)の符号はマイナスではなくプラス。一見すると\(e_0\)と\(m^*\)の順序を入れ替えるのでマイナスが出てきそうに見えるが\(m^*\)は2ベクター(1ベクトル\(m\)の3次元の双対をとったため)なので2回順序を入れ替えて符号が変わらない。また、タイポではないがわかりにくい箇所として \(-m^*\wedge n_\Pi = \langle m, n_\Pi \rangle I\) と変形しているところがあるが、これは式(7.28)の補足文と同様のテクニックを用いている。
  • 双対を取った時の次元は4次元の場合は変わらない?
    • 変化する。4から次元数を引いた次元になる。直接表現と双対表現が出てくるので混同してしまうかも。
    • 点→平面
    • 平面→点
    • 直線→直線
    • まとめたものがp.148 表7.1。
  • 双対に4次元のものと3次元のものが混在する。
    • 双対を表す記号\((\cdots)^*\)が随所に出てくるが、書籍の中では \(p, L, \Pi\)などに対して双対を適用する場合は4次元での双対を表していて、\(\mathbf{x},\mathbf{y},\mathbf{m},\mathbf{n}\)などの3次元ベクトルに対して双対を適用する場合は3次元での双対を表している。
    • 双対の中に出てくる体積要素\(I\)が4次元か3次元かの差があり計算結果が変わるため注意が必要。
    • 章の最初の方では3次元の双対を使用する際に断り書きがあるが、後半になると省略されている。
    • Dorstの本では 4次元での双対を\((\cdots)^*\)、3次元での双対を\((\cdots)^\star\)のように星を使って表現を分けている。
  • 双対定理について。
    • 双対定理で結合(join, \(\cup\))と交差(meet, \(\cap\))を入れ替えることができる。
    • 結合は外積\(\wedge\)に置き換えられるため計算が容易だが、交差はそのままでは計算が困難。
    • 計算の難しい交差であっても、双対定理を使うことで直接的に計算が行える。まとめたものがp.153 表7.2。
  • 「4点以上の結合(通常は平面にならない)」や「3平面の交差が直線になる」ケースなどが考えられる。
    • 計算しないとわからないが、存在しない時は0になるのではないか?
    • このあたりは考えてみると面白そう。

動画

GAViewerでの確認

GAViewerで動作確認をしながら教科書を読んだのでコマンド一覧をGistに残しておきます。冒頭に書いたようにbatch(初期化のバッチ処理を定義)とfunction(3次元の双対用の関数を定義)を使いながら記述しています。

勉強会での取り組み

画面共有で画面の固定を忘れたため、YouTubeでの動画が少し見づらくなってしまいました。今後は忘れないように、最初に出すスライドに画面を固定するようにメモを追加します。

次回

次回のテーマは幾何学と代数系 第8章「共形空間と共形幾何学−幾何学的代数−(前編 )」です。

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