前回に引き続き幾何学的代数勉強会を実施しました。今回はのテーマは「幾何学と代数系」の第5章から、「グラスマンと外積代数」です。ホワイトボードを活用しつつ外積や双対について議論が盛り上がりました。
勉強会の内容
勉強会の中で話題に上がったトピックを挙げます。
- グラスマン代数系
- 外積(\(\wedge\))を使った代数系。
- 第6章の冒頭で出てくる。
- 縮約
- 外積と内積で定義できる。
- 少し理解しにくい。
- 双対
- なぜマイナスが出るのか?3次元空間内で直感的(幾何学的)な理解を試みるがうまく行かず。
- 一般のn次元においては p.105 補足内で解説されている\((-1)^{n(n-1)/2}\) がつく。
- 直接表現と双対表現
- 5章の範囲では同じものを2つの表現の仕方をしているだけでありがたみがわからない。
- 第8章の「共形空間と共形幾何学 -幾何学的代数-」まで読んでやっとわかる。直接表現では難しい計算が双対表現にすると簡単になる。
- 演習問題5.1
- 解答例の基底を使った解き方が難しすぎる?
- 3次元空間における2重ベクトルの特殊性が現れた問題。
- 演習問題5.3
- 複比\([A,B; C,D]\)が面白い。
- 複比は面白いけれどいまいち使いどころはわからない。
- Dorst本から電信柱と透視図法の問題。
前回同様、動画を公開しています。トピックを見て気になられた方は動画でどんなやり取りがされていたかを確認してみてください。動画の中で出てくるホワイトボードの画像も必要に応じて参照してください。
GAViewerでの確認
動画では出てきませんが、5章を読みながらGAViewerで確認した際のコマンドが以下になります。こちらはSlackで事前に共有していました。コマンドを実行して図示しながら読み進めるとより理解が深まるかもしれません。
a=e1
b=e2
c=e3
a+2*a
a+b
a^b
2*a^3*b
a^a
a^b+a^c
a^(b+c)
a^b^c
b^a^c
a^b^a
d=e1+e2+e3
a^b^(2*c+3*d)
2*a^b^c+3*a^b^d
a^b^(c+2*a+3*b)
a^(b^c)
(a^b)^c
a^b^c
2^a
a^2
2*a
a^b^c^d
lcont(a, 3*a)
lcont(a, 3*a^b)
a^b
lcont(d, a^b)
lcont(a^b, c^d)
lcont(a, a^b^c)
lcont(b^a, a^b^c)
lcont(a^b, a^b^c)
lcont(2, 3)
lcont(2, a)
lcont(2, a^b)
lcont(2, a^b^c)
lcont(c, a^b)
norm(2)
sqrt(lcont(2,2))
norm(2*a)
sqrt(lcont(2*a, 2*a))
norm(2*a^b)
sqrt(lcont(2*b^a, 2*a^b))
norm(2*a^b^c)
sqrt(lcont(2*c^b^a, 2*a^b^c))
dual(a)
dual(a^b)
dual(a^b^c)
dual(3)
I = a^b^c
-lcont(a, I)
-lcont(a^b, I)
-lcont(a^b^c, I)
-lcont(3, I)
dual(dual(a^b))
norm(dual(2*a^b^c))
- 縮約(lcont)と内積(.)は違う?
疑問に書いている点はSlackでのやりとりで解決していて、挙動が似ているけれど、下のようなケースで違う部分があるということでした。
- 縮約
- lcont(e1^e2,e2) = 0 (グレードが負になる場合は0として扱う)
- lcont(2,3) = 6 (スカラ同士の縮約はスカラの積になる)
- 内積
- e1^e2 . e2 = e1
- 2 . 3 = 0
教科書でもDosrtの本でもあまり内積を使用していないので、この先の議論をすすめる上では内積はなるべく使わず、縮約(左縮約、lcont)を使用するのが良さそうだという結論になりました。
勉強会の取り組み
図や数式を勉強会の中で共有するためにホワイトボードサービスを使用しました。今回は https://sketchboard.io/ を使用しました。
- メリット
- 無料で5名まで同時編集可能
- 編集領域が無限に広がっている
- 手書き文字を書いたあとで移動させられる
とにかく無料でこの人数での編集が可能なことが決め手でした。また、数式や図を扱う上で、書ける領域が限られているとどこに書くかという本質でないところに頭を使ってしまうので無限に広がる描画領域もとても助かります。今回のような小規模な勉強会用途ではとても都合が良いです。
ちなみに、編集が5人までなだけで閲覧は人数を増やすこともできるので、編集権限だけを絞って人数を増やすという使い方もできます。しばらくはこのサービスを使っていこうと思います。
次回
次回のテーマは幾何学と代数系 第6章「幾何学積とクリフォード代数」です。とりあえず8章まではこの流れで進めていくことになると思います。